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東京地方裁判所 平成3年(ワ)10082号 判決

東京都足立区東和二丁目一五番六-一〇九号

原告

永瀬憲治

東京都板橋区板橋四丁目二六番五号

原告

日本コンダクター販売株式会社

右代表者代表取締役

永瀬憲治

右両名訴訟代理人弁護士

竹中英信

埼玉県富士見市鶴瀬西三丁目一五番四八号

被告

有限会社水光社

右代表者取締役

小出茂

右訴訟代理人弁護士

山田靖彦

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  原告永瀬憲治の請求

被告は、原告永瀬憲治に対し、金一億四〇一万五二〇六円及びこれに対する平成三年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告日本コンダクター販売株式会社の請求

1  被告は、別紙物件目録(一)ないし(四)記載の鍵盤楽器を製造、販売してはならない。

2  被告は、前項の各鍵盤楽器を廃棄せよ。

3  被告は、原告日本コンダクター販売株式会社に対し、金八四五万五四四一円及びこれに対する平成三年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  本件は、原告永瀬憲治が別紙特許権目録記載の特許権(本件特許権)を、原告日本コンダクター販売株式会社が、本件特許権について専用実施権を有しているものであるところ、別紙物件目録(一)ないし(四)記載の各鍵盤楽器(被告製品(一)ないし(四))を製造販売する被告の行為が本件特許権を侵害するものであると主張して、原告永瀬憲治において本件特許権に基づき損害賠償の支払いを求め、原告日本コンダクター販売株式会社において右専用実施権に基づき被告製品の製造販売の差止め及び損害賠償の支払い等を求めている事案である。

二  争いのない事実

1  原告永瀬憲治は本件特許権を有している。

2  原告日本コンダクター販売株式会社は、平成二年一一月二日、本件特許権について、原告永瀬憲治から、範囲全部の専用実施権の設定を受け、平成三年二月二五日その旨の設定登録を受けた。

3  本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(本件明細書)の特許請求の範囲は、本判決添付の特許公報(甲第一号証、本件公報)の該当項記載のとおりである。

4  本件発明は、次のとおりの構成要件に分けることができる(以下、左の構成要件(一)を単に「要件(一)」ということとし、他の要件についても同様に表示する。)。

(一) 五音音階を主体に配列した鍵盤を有し、

(二) 性格の異なる二つの五音音階の鍵盤を組み合わせた

(三) ことを特徴とする鍵盤楽器

5  被告製品の構造は、別紙物件目録(一)ないし(四)記載のとおりである(以下、被告製品に関する番号・記号は別紙物件目録(一)ないし(四)記載のものを指す。)。

三  争点

本件の争点は、被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否かであるが、特に本件発明にいう「五音音階」をどのように理解するかが主たる争点であって、この点に関する当事者双方の主張は次のとおりである。

1  原告らの主張

(一) 被告製品は、二つの「五音音階を主体に配列した鍵盤」を有するものであり、またこの二つの鍵盤は「性格の異なる」ものであるから、被告製品はいずれも本件発明にかかる鍵盤楽器に該当するものである。

(1) 「五音音階の鍵盤」の意義について

「五音音階」とは、五つの音からなる音階であって一オクターブの中に五つの音を持つ音階の総称であり、本件発明にいう「性格の異なる二つの五音音階」は本件明細書において実施例として記載した「二系列の五音音階」のみを意味しているものではない。

日本音楽は、雅楽、民謡等多くのジャンルがあり、それぞれのジャンルの特殊性がきわめて強く、使われている音階も多様かつ複雑であって、西洋音楽のように簡単に系列化して示すことは困難である。本件発明は、このように一義的に系統化の困難な邦楽においても、上下の鍵盤列に性格の異なる二つの五音音階を組み合わせることにより、各種の邦楽が演奏し易くなる鍵盤楽器を実現することを目的とするものである。本件明細書の発明の詳細な説明に示した曲例からも明らかなように、本件発明は、わらべうた、古謡、童謡、歌謡曲、演歌、民謡等の純邦楽、さらには西洋音楽の影響を受けた日本音楽も含めて対象にするものであるから、本件発明にいう、性格の異なる二つの「五音音階」とは、本件明細書に開示されている、西洋音楽のファとシがないヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階の系列と、西洋音楽のソとレがない陰音階及びヨナ抜短音階の系列という、二系列の五音音階のみを意味するものではない。

また、「五音音階」とは、前記のとおり、五つの音からなる音階であって一オクターブの中に五つの音を持つ音階の総称であるが、間隔の選び方によって全音階、半音階、長音階と短音階等々、多種多様な五音音階が存在し、かつ形成される。また、実際に、時代、地域によって多種多様な音階が見られ、各音階の性格も極めて多様であるから、本件発明にかかわる全ての五音音階を本件明細書に示すことはできないし、また、特許法施行規則によれば、実施例は、特許出願人が最良の結果をもたらすと思うものをなるべく多種類掲げて記載すれば足りるとされているのであるから、全ての五音音階を記載する必要性もない。

右のとおり、本件明細書に示された二系列の五音音階は、単に実施例にすぎず、本件発明の技術的範囲をこれらに限定し、制限するものではない。

(2) 被告製品について

被告製品は、それぞれ別紙物件目録(一)ないし(四)記載の構造を有するものであって、いずれも下段に「ミ、ファ、ラ、シ、ド」の五音音階を配列した鍵盤を有し、上段に「レ、ファ#、ソ、シ♭(又はラ#)、ド#」の五音音階を配列した鍵盤が組み合わされ、性格の異なる二つの五音音階の鍵盤が組み合わされ、またいずれも上下二段の五音音階の鍵盤を用いることにより、詩吟、民謡、演歌、純邦楽等の曲が演奏し易くなるという作用効果を奏するものである。

(3) 右のとおりであるから、被告製品が、本件発明にいう「五音音階を主体に配列した鍵盤を有し、性格の異なる二つの五音音階の鍵盤を組み合わせたことを特徴とする鍵盤楽器」に該当することは明らかであって、被告製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属する。

(二) 被告の主張に対する反論

(1) 被告は、「いわば、単に騒音というべき音しか生じない場合であっても全て五音音階の鍵盤ということになる」旨主張するが、本件発明にいう音階は、単に騒音ともいうべき音しか生じない場合を含めたものではなく、「音階の各音の間の音程関係、あるいはむしろ各音の主音に対する音程関係は、ある程度まで、数字的に明示することができる」(甲第一六号証)ものであるから、このように明示された性格の異なる二つの五音音階を組み合わせたものが本件発明の構成要件となるものであって、被告の右主張は失当である。

(2) 被告は、「被告製品における上段の鍵盤列は、音楽における音階をなしていないから、それのみでは、いかなる音楽であろうと、全く演奏できない」旨主張するが、等分音階や人為的音階等の分類される五音音階の存在を否定することはできないものであって、「人為的にまず音階を設定し、それからこの音階に基づく音楽を作曲することもある」(甲第一六号証)し、「音階は・・・楽器と結び付けられることもある。つまり、ひとつの楽器の発する音の段階的な配列を指すことがある。」(甲第一六号証)のであり、被告製品の上段の鍵盤列の音程関係(長三度、短二度、短三度、短三度、短二度)は、琉球音階の音程関係(長三度、短二度、長二度、長三度、短二度)に近似し、人為的音階に分類される五音音階であるから、右のような被告の主張は失当である。

2  被告の主張

(一) 一般的に「五音音階」とは、ある一つの楽曲を構成する主要な音が五つの音高の音からなる音階であり、この五つの音からなる音階により当該楽曲が音楽的効果を表出できるものを指称している。我が国の伝統音楽である邦楽は、この五音音階によっているといわれているが、この五音は、目茶苦茶に規定されているものではなく、いわゆる順八逆六の方法などの一定の秩序によって算出されるものである。

したがって、本件発明にいう「五音音階の鍵盤」とは、根本的に、単にアトランダムに異なる音高の五つの音を生ずる鍵盤があれば足りるというものではなく、他の組の鍵盤を用いなくても五音音階の楽曲を演奏することのできる鍵盤でなくてはならない。このように考えないと、いわば単に騒音というべき音しか生じない場合であっても全て五音音階の鍵盤ということになってしまうのである。

そして、本件明細書の発明の詳細な説明によれば、本件発明にいう「五音音階」としては、西洋音楽のファとシがないヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階の系列と、同じく西洋音楽のソとレがない陰音階及びヨナ抜短音階の系列の二系列のみが開示され、かかる二系列の鍵盤の他には、具体的にどのような性格の五音音階の鍵盤があるのかが全く開示されていないし、また、本件明細書には、「邦楽は、・・・二系列あることに着目し、ヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階等を演奏し易いよう配列した五音音階の鍵盤列1と陰音階及びヨナ抜短音階等を演奏し易いよう配列した五音音階の鍵盤列2を・・・組み合せて構成したものである」と明記されているのであるから、本件発明の「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤を組み合わせた」という構成は、右二系列のうちの一方の系列の音楽を演奏するための鍵盤を上段に、他方の系列の音楽を演奏するための鍵盤を下段に、それぞれ配列した鍵盤配列を規定していることは明らかである。

(二) 被告製品の鍵盤は、いずれも上下二段に配列されているが、そのうちの上段の鍵盤配列は、次のとおりである。

(1) 被告製品(一)は、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#。

(2) 被告製品(二)は、ファ、ソ、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ。

(3) 被告製品(三)は、ファ#、ソ、ラ#、ド#、レ、ファ#、ソ、ラ#、ド#、レ、ファ#、ソ、ラ#。

(4) 被告製品(四)は、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ。

被告製品における右のような上段の鍵盤配列は、そもそも音楽における音階をなしておらず、それのみでは、いかなる国、民族、地方又は時代の音楽であろうと、音階構成が「五音音階」と規定される音楽を全く演奏できないものである。しかも、原告は、被告製品の右のような上段の鍵盤をもって、どのような「五音音階」と規定される音楽を演奏できるかを、具体的に全く示していないから、被告製品における上段の右鍵盤列は、本件発明にいう「五音音階」ということはできず、したがって、被告製品の上下二段の鍵盤配列は明らかに、性格の異なる二つの五音音階の鍵盤を組み合わせたものではない。

また、被告製品は、いずれも、詩吟を吟詠する場合の「吟詠伴奏」用の楽器であり、下段の鍵盤を主体的鍵盤とするものであり、上段の鍵盤は、下段の鍵盤だけでは奏出し難い節調又は下段の鍵盤だけでは演奏できない音階(例えば七音音階)の音楽を演奏する場合に、下段の鍵盤と併用して用いるための補助的鍵盤にすぎない。すなわち、被告製品では、上段の鍵盤だけで音楽を演奏することは全く予想されておらず、実際にも演奏不能である。よって、被告製品は、下段の鍵盤のみを見た場合は五音音階の鍵盤と言えるにしても、全体として上下段を併せて一オクターブに一〇音の鍵盤を持つ鍵盤楽器であって、本件発明の要件(二)の「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤を組み合わせた」鍵盤楽器には当たらない。

第三  争点に対する判断

一  「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」の意義について

1  本件明細書の特許請求の範囲に記載された「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」は、ある一つの性格を有する五音音階の鍵盤とこれとは異なる性格を有する五音音階の鍵盤とを意味しているものと解せられるが、このような「ある一つの性格を有する五音音階の鍵盤」の意味内容や具体的構成については、特許請求の範囲の記載からだけでは明らかではないといわざるを得ない。そこで、本件明細書の発明の詳細な説明を参酌して、その意味内容や具体的構成を検討することとする。

2  本件明細書の発明の詳細な説明には、本発明の目的として、「汽車ぽっぽ」「夕焼けこやけ」「春よ来い」等のヨナ抜長音階の曲、「かごめかごめ」「あんたがたどこさ」「山寺の和尚さん」等の陽音階の曲及び「ソーラン節」「ドンパン節」「おてもやん」等の民謡音階(尺八音階)の曲では、西洋音階のファとシが余分となり、また「さくらさくら」「東京音頭」「会津磐梯山」等の陰音階の曲及び「五木の子守唄」「浪曲子守唄」「麦と兵隊」等のヨナ抜短音階の曲では、西洋音階のソとレが余分となる旨が記載され(本件公報1欄26行ないし3欄6行)、このため「従来のピアノ、オルガン、電子楽器等の鍵盤楽器は、西洋音楽の長音階と短音階を構成する七音音階を主体とする配列の鍵盤を有しているが、このような楽器を使用して五音音階を主体とする邦楽の演奏をすると、一オクターブの内で二つの鍵盤が余分になるので、演奏の誤りを生じやすく、不便であった。」(同1欄20ないし26行)という従来技術の欠点を指摘したうえ、「本発明は邦楽を演奏し易くした鍵盤楽器に関する」(同1欄18行)ものであると記載されている。

続いて、本件明細書の発明の詳細な説明には、邦楽愛好家が右のヨナ抜長音階、陽音階、民謡音階(尺八音階)、陰音階及びヨナ抜短音階という「五種類の音階全般を通じて精通する場合は少なく、そのうちの一つ若しくは二つの音階に精通することが多い。」(同3欄7ないし10行)という邦楽愛好家の実情が記載されたうえ、「本発明はそのような実情に鑑み、・・・これらの性格の異なる音階のうち、邦楽の愛好者が精通している関係にある音階を上下に組み合わせたことを特徴とする鍵盤楽器に係るものである。」(同3欄11ないし15行)と記載され、また「本発明は、上記のように、邦楽は第3図に示すような系列の音階と第4図に示すような系列の音階の二系列あることに着目し、ヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階等を演奏し易いよう配列した五音音階の鍵盤列1と陰音階及びヨナ抜短音階等を演奏し易いよう配列した五音音階の鍵盤列2を二段に組み合せて構成したものである」(同3欄32ないし36行)と記載されている。

さらに、本件明細書の発明の詳細な説明には、本発明の楽器は、このように「邦楽の性格の異なる各種の五音音階の鍵盤を隣接して設けたから、『汽車ポッポ』『かごめかごめ』『ソーラン節』『さくらさくら』『五木の子守唄』その他のヨナ抜長音階、陽音階、民謡音階、陰音階及びヨナ抜短音階等の邦楽曲を誤りなく演奏することができる。」(同3欄38ないし44行)、あるいは「邦楽を演奏しやすい鍵盤楽器が提供される。」(同6欄3、4行)という作用効果について記載されている。

3  右のような本件明細書の発明の詳細な説明の記載からすると、本件発明は、邦楽の音階には、ヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階(尺八音階)という西洋音階のファとシが不要となる系列と陰音階及びヨナ抜短音階という西洋音階のソとレが不要となる系列との二系列があることに着目してなされたものであり、邦楽を演奏し易い鍵盤楽器を提供するという目的の達成のために、この二系列の五音音階を組み合わせる構成のみを開示したものであり、その他については何らの開示もないのであるから、本件発明にいう「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」とは、ヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階の系列の邦楽を演奏するための五音音階の鍵盤と陰音階及びヨナ抜短音階の系列の邦楽を演奏するための五音音階の鍵盤を意味するものと認められる。

ところで、本件明細書の発明の詳細な説明欄には、「邦楽の音階その他の五音音階を主体に配列した鍵盤を有し」という記載(本件公報第3欄11、12行)があり、この記載部分のみからすると、本件発明の「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」には、右のような二系列の邦楽演奏のための五音音階の鍵盤だけでなく、「その他の五音音階」も含まれるかのようである。しかしながら、「その他の五音音階」が具体的にどのような性格の五音音階を意味するのかは開示されておらず、その意味するところは極めて広範かつ不明確であって、邦楽演奏をし易くするという本発明の目的達成に何ら資するところはないといわざるを得ないし、本件明細書には、前記のように、邦楽には二系列の音階があることから、それぞれの系列の邦楽を演奏しやすいように配列した鍵盤を二段に組み合わせる構成のみが開示されているにすぎない。

したがって、本件明細書の「その他の五音音階」という記載部分のみを根拠として、本件発明における五音音階が、系統化の困難な音階まで含むものと考えることはできず、本件発明における「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」とは、前記のとおり、本件明細書記載の二系列の邦楽を演奏するための五音音階の鍵盤に限られるとするのが相当である。

4  原告は、日本音楽に使用されている音階はさまざまであり、本件発明の目的とするところは、一義的に系統化の困難な邦楽においても、上下の鍵盤列に性格の異なる二つの五音音階を組み合わせることにより、各種の邦楽が演奏し易くなる鍵盤楽器を実現しようとするものであり、本件明細書の発明の詳細な説明に示した曲例からも「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」とは、実施例に示した二系列の五音音階の鍵盤に限定されるものではない旨主張し、これに沿うものとして、甲第一六ないし第一八号証を挙げる。

なるほど、右甲号各証には、邦楽には系統化の困難な種々の音階があること、音楽より以前の段階で、人工的に案出した音階等の人為的音階があること等が記載されているが、前記のとおり、本件明細書には、系統化の困難な邦楽を、上下の鍵盤列に性格の異なる二つの五音音階を組み合わせることにより演奏し易くする鍵盤楽器については、何ら開示されていないから、本件特許請求の範囲にいう「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」が実施例に示した二系列の五音音階の鍵盤以外のものを含むものと認めることはできず、原告の右主張は失当である。

なお、本件明細書の発明の詳細な説明によれば、第一〇図の実施例に関して、音程関係を保ちつつ上段の音の高さを移動させ、上下の鍵盤を使用して、転調や通常の五音音階では演奏できない曲の演奏を可能にすることが記載され、また第一一図及び第一二図の実施例に関しては、他の鍵盤を付加して七音音階を演奏可能にすることが記載されていることが認められるが、これらの記載は、第三図及び第四図に記載されている邦楽の二系列の五音音階のうちの各系列の一種類の五音音階を配列した鍵盤を、それぞれ上段、下段に設け、その音階にない音を用いる楽曲は上段と下段の五音音階の鍵盤を併用したり、付加的に設けた鍵盤を用いたりして演奏することを示しているものにすぎず、系統化の困難な邦楽を五音音階のみで演奏しようとした構成であるとは認められない。

二  被告製品について

被告製品の構造を記載したものとして当事者間において争いのない別紙物件目録(一)ないし(四)によれば、被告製品における下段の鍵盤はいずれも「ミ、ファ、ラ、シ、ド」の五音であること、被告製品(一)、(二)及び(四)における上段の鍵盤は「レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#」の五音であり、被告製品(三)における上段の鍵盤は「レ、ファ#、ソ、ラ#、ド#」の五音であることが明らかである。

なお、後記証拠によれば、被告製品(一)(二)の取扱説明書には「上段にはあらゆる調節、あらゆる音楽に対応できるようにソ、シ♭、ド#、レ、ファ#を配列しました。」と記載され(甲一一、一二)、被告製品(三)の取扱説明書には、上段の鍵盤の名称を「補助鍵」とし、「補助鍵は、音階によっては、特定の鍵がよく使われる場合があります。また、主要音階以外の変種の音階の曲や、途中で移調するような曲を演奏する場合、補助鍵の使用頻度が高くなります。」と記載され(甲一三)、また被告製品(四)のパンフレットには「上段には4度、5度、並びに陽施法に転調する為のキー・・・が臨時音(補助鍵)として設定されています。その為・・・あらゆる曲が演奏できるように作られた鍵盤です。」と記載されている(甲一九)ことが認められる。この事実によれば、被告製品においては、主に下段の鍵盤を使用して演奏し、上段の鍵盤は、下段の鍵盤だけでは対応できない音階等を演奏する場合に、これと併用して使用するための補助的鍵盤であって、これのみで演奏することを意図したものではないことが認められる。

右各事実によれば、被告製品においては、下段の鍵盤の配列は陰音階に該当するものの、上段の鍵盤の配列は、右陰音階とは「性格の異なる五音音階」であるヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階(尺八音階)に該当するものでないから、被告製品はいずれも本件発明にいう「性格の異なる二つの五音音階の鍵盤」の要件を充足しないものである。

第四  結論

以上によれば、原告らの本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がない。

(裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 足立謙三 裁判官 前川高範)

(別紙)

特許権目録

(一) 登録番号 第一五八四九二三号

(二) 発明の名称 鍵盤楽器

(三) 出願日 昭和五九年二月三日

(四) 公告日 平成二年二月二三日

(五) 登録日 平成二年一〇月三一日

物件目録(一)

製品名「邦楽トレーナー」

別紙図面及びイ号物件説明書に示すとおりの鍵盤楽器

イ号物件説明書

一 別紙図面の説明

第1図は被告会社の製造販売する鍵盤楽器のうち、製品名邦楽トレーナーの正面図である。

二 構造

本物件は電気によって作動し、第1図の邦楽トレーナーは、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#の一〇個とミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファの一二個の上下二段の鍵盤を有し、後記符号〈2〉ないし〈5〉、及び〈11〉のキーを操作して音の高さ、音量等を調節し、符号〈1〉の鍵盤を押して楽曲を演奏し、符号〈6〉のスピーカーから音を発する鍵盤楽器である。ほかに符号〈7〉のキーを操作して、演奏曲の時間を符号〈8〉のタイマー表示面に表示させる事ができる。更に、ICカードを符号〈9〉の差込口に入れ、符号〈10〉のキーを操作して演奏曲の記憶再生、自動伴奏させることができる。

符号

〈1〉 鍵盤

〈2〉 本数切替スイッチ

〈3〉 オクターブ・キー

〈4〉 微調整キー

〈5〉 余韻キー

〈6〉 スピーカー

〈7〉 タイマー操作キー

〈8〉 タイマー表示面

〈9〉 ICカード差込口

〈10〉 記憶及び自動伴奏装置操作キー

〈11〉 電源スイッチ

〈12〉 音量スイッチ

〈13〉 ACアダプター端子

第1図

〈省略〉

物件目録(二)

製品名「ハンデイトレーナー」

別紙図面及びロ号物件説明書に示すとおりの鍵盤楽器

ロ号物件説明書

一 別紙図面の説明

第2図は被告会社の製造販売する鍵盤楽器のうち、製品名ハンデイトレーナーの正面図である。

二 構造

本物件は電気によって作動し、ファ、ソ、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レの九個とミ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シ、ド、ミの一〇個の上下二段の鍵盤を有し、後記の符号〈2〉、〈3〉、〈4〉、〈5〉ないし〈6〉のキーを操作して音の高さ、音量等を調節し、符号〈1〉の鍵盤を押して楽曲を演奏し、符号〈7〉のスピーカーから音を発する鍵盤楽器である。

符号

〈1〉 鍵盤

〈2〉 音程ガイドキー

〈3〉 本数切替スイッチ

〈4〉 微調整キー

〈5〉 電源、音色選択キー

〈6〉 音量スイッチ

〈7〉 スピーカー

〈8〉 ACアダプター端子

第2図

〈省略〉

物件目録(三)

製品名「水光100」

別紙図面及びハ号物件説明書に示すとおりの鍵盤楽器

ハ号物件説明書

一 別紙図面の説明

第3図は製品名水光100の正面図である。

二 構造

本物件は電気によって作動し、第3図の水光100は、ファ#、ソ、ラ#、ド#、レ、ファ#、ソ、ラ#の一三個とミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シの一四個の上下二段の鍵盤を有し、後記符号〈2〉ないし〈12〉のキーを操作して音の高さ、音量等を調節し、符号〈1〉の鍵盤を押して楽曲を演奏し、符号〈13〉のスピーカーから音を発する鍵盤楽器である。ほかに符号〈15〉のキーを操作して、演奏曲の時間を符号〈14〉のタイマー表示面に表示させる事ができる。更に、ICカードを符号〈17〉の差込口に入れ、符号〈16〉のキーを操作して演奏曲の記憶再生、自動伴奏させることができる。

符号

〈1〉 鍵盤

〈2〉 音程ガイドキー

〈3〉 本数切替スイッチ

〈4〉 オクターブ・キー

〈5〉 微調整キー

〈6〉 余韻キー

〈7〉 スリ上げキー

〈8〉 単音和音切替キー

〈9〉 揺り切替キー

〈10〉 調律キー

〈11〉 音色選択キー

〈12〉 音量スイッチ

〈13〉 スピーカー

〈14〉 タイマー表示面

〈15〉 タイマー操作キー

〈16〉 記憶及び自動伴奏装置操作キー

〈17〉 ICカード差込口

〈18〉 電源スイッチ

〈19〉 ACアダプター端子

第3図

〈省略〉

物件目録(四)

製品名「水光トレーナー」

別紙図面及びニ号物件説明書に示すとおりの鍵盤楽器

ニ号物件説明書

一 別紙図面の説明

第4図は製品名水光トレーナーの正面図である。

二 構造

本物件は電気によって作動し、第4図の水光トレーナーは、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レ、ファ#、ソ、シ♭、ド#、レの一五個とミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シ、ド、ミ、ファ、ラ、シ、ドの一五個の上下二段の鍵盤を有し、後記符号〈3〉ないし〈18〉のキーを操作して、音の高さ、音量などを調節し、符号〈1〉の鍵盤を押して楽曲を演奏し、符号〈22〉のスピーカーから音を発する鍵盤楽器である。ほかに符号〈20〉のキーを操作して演奏時間を符号〈21〉の表示面に表示させたり、ICカードを符号〈19〉の差込口に入れ符号〈2〉のキーを操作して演奏曲の記憶再生、自動伴奏をさせることができる。

符号

〈1〉 鍵盤

〈2〉 自動伴奏

〈3〉 音程ガイドボタン

〈4〉 単音和音切替ボタン

〈5〉 オクターブ切替スイッチ

〈6〉 トリラーボタン

〈7〉 自動和音ボタン

〈8〉 音程ベンド

〈9〉 強弱ベンド

〈10〉 ビブラートボタン

〈11〉 電源スイッチ

〈12〉 調律切替スイッチ

〈13〉 微調スイッチ

〈14〉 音量スイッチ

〈15〉 本数切替スイッチ

〈16〉 音色切替スイッチ

〈17〉 ビブラート速さ調節スイッチ

〈18〉 余韻スイッチ

〈19〉 ICカード差込口

〈20〉 タイマー操作ボタン

〈21〉 表示面

〈22〉 スピーカー

第4図

〈省略〉

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告

〈12〉特許公報(B2) 平2-8317

〈51〉Int.Cl.5G 10 C 3/12 識別記号 庁内整理番号 6789-5D 〈24〉〈44〉公告 平成2年(1990)2月23日

発明の数 1

〈54〉発明の名称 鍵盤楽器

〈21〉特願 昭59-17185 〈65〉公開 昭60-163092

〈22〉出願 昭59(1984)2月3日 〈43〉昭60(1985)8月24日

〈72〉発明者 永瀬憲治 東京都足立区東和2-15番6-109号

〈71〉出願人 永瀬憲治 東京都足立区東和2-15番6-109号

〈74〉代理人 弁理士 井上清子 外1名

審査官 松田昭重

〈56〉参考文献 吟剣詩舞、11〔11〕、(1981、11、1)財団法人日本吟剣詩舞振興会、P.6~7

〈57〉特許請求の範囲

1 5音音階を主体に配列した鍵盤を有し、性格の異なる2つの5音音階の鍵盤を組み合わせたことを特徴とする鍵盤楽器。

2 2つの音階の宮音の位置を隣接して組み合せて成る特許請求の範囲第1項記載の鍵盤楽器。

3 2つの音階の宮音の音の高さを同一にして成る特許請求の範囲第2項記載の鍵盤楽器。

4 2つの5音音階がヨナ抜長音階とヨナ抜短音階である特許請求の範囲第1項記載の鍵盤楽器。

5 2つの5音音階が民謡音階と陰音階である特許請求の範囲第1項記載の鍵盤楽器。

6 2つの5音音階がヨナ抜長音階と陰音階である特許請求の範囲第1項記載の鍵盤楽器。

7 2つの5音音階が陽音階と陰音階である特許請求の範囲第1項記載の鍵盤楽器。

発明の詳細な説明

本発明は邦楽を演奏し易くした鍵盤楽器に関する。

従来のビアノ、オルガン、電子楽器等の鍵盤楽器は、西洋音楽の長音階と短音階を構成する7音音階を主体とする配列の鍵盤を有しているが、このような楽器を使用して5音音階を主体とする邦楽の演奏をすると、1オクターブの内で2つの鍵盤が余分になるので、演奏の誤りを生じやすく、不便であつた。例えば、「汽車ぼつぼ」、「夕焼けこやけ」、「春よ来い」、「肩たたき」、「螢の光」、「カモメの水兵さん」、「赤とんぼ」、「雨降りお月さん」、「桃太郎」、「鉄道唱歌」、「星影のワルツ」、「くちなしの花」等の曲は、ヨナ抜長音階で作られているが、第1図に示すように、宮、商、角、徴、羽の5音音階のうち、角音と徴音の間及び羽音と宮音の間に使用しない鍵盤が位置し、演奏の邪魔になる。また、「かごめかごめ」、「あんたがたどこさ」、「山寺の和尚さん」、「君が代」、「叱られて」、「炭坑節」、「さいたさいた」、「木曽節」、「ほととぎす」、「篠山節(デカンシヨ節)」、「べこの子うしの子」、「お月さんいくつ」等の陽音階の曲の場合は商音と角音の間及び徴音と羽音の間に余分な鍵盤がある。「ソーラン節」、「ドンパン節」、「おてもやん」、「八木節」、「真室川音頭」、「安来節」、「北海盆唄」、「花笠踊り」、「田原坂」、「串本節」等の民謡音階(尺八音階)の曲の場合には、宮音と商音の間及び徴音と羽音の間に余分な鍵盤がある。上記のように、ヨナ抜長音階、陽音階、民謡音階、(尺八音階)は、西洋音階のフアとシが余分となる。

一方、「さくらさくら」、「東京音頭」、「会津磐梯山」、「中国地方の子守唄」、「通りやんせ」、「お江戸日本橋」、「佐渡おけさ」、「東雲節」、「ダンチヨネ節」、「花嫁人形」等の陰音階の曲は、第2図に示すように商音と角音の間及び羽音と宮音の間に余分な鍵盤があり、また「五木の子守唄」、「浪曲子守唄」、「麦と兵隊」、「ないしよ話」、「悲しい酒」、「赤城の子守唄」、「ズンドコ節」、「船頭小唄」、「月の法善寺横町」、「別れの一本杉」等のヨナ抜き短音階の曲は、角音と徴音の間及び羽音と宮音の間に余分な鍵盤が位置することになる。このように陰音階及びヨナ抜短音階は、西洋音楽のソとレが余分になる。

また、邦楽愛好家の実情を考察すると、上記5種類の音階全般を通じて精通する場合は少なく、そのうちの1つ若しくは2つの音階に精通することが多い。

本発明はそのような実情に鑑み、上記の邦楽の音階その他の5音音階を主体に配列した鍵盤を有し、これらの性格の異なる音階のうち、邦楽の愛好者が精通している関係にある音階を上下に組み合わせたことを特徴とする鍵盤楽器に係るものである。

上述のように、ヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階(尺八音階)の場合は、西洋音楽のフアとシが余分であるから、第3図に示すように、フアとシを除いた5音音階の鍵盤の配列が考えられ、また陰音階とヨナ抜短音階の場合は、西洋音楽のソとレを除いた第4図に示すような配列の5音音階の鍵盤配列が考えられる。第3図、第4図に示すような配列の鍵盤を有する楽器を各音階毎に用意すれば各音階の邦楽を誤りなく演奏することが容易になるが、複数用意しなければならないから、例えばヨナ抜長音階の曲を演奏したり、ヨナ抜短音階の曲を演奏したりするというときに、その都度楽器を交換しなければならず不便である。

そこで、本発明は、上記のように、邦楽は第3図に示すような系列の音階と第4図に示すような系列の音階の2系列あることに着目し、ヨナ抜長音階、陽音階及び民謡音階等を演奏し易いよう配列した5音音階の鍵盤列1と陰音階及びヨナ抜短音階等を演奏し易いよう配列した5音音階の鍵盤列2を2段に組み合せて構成したものである(第5図)。

本発明の楽器は上記のように邦楽の性格の異なる各種の5音音階の鍵盤を隣接して設けたから、「汽車ポツポ」、「かごめかごめ」、「ソーラン節」、「さくらさくら」、「五木の子守唄」その他のヨナ抜長音階、陽音階、民謡音階、陰音階及びヨナ抜短音階等の邦楽曲を誤りなく演奏することができる。

本発明の楽器は、各鍵盤の宮音の位置を次のように一致させるとさらに使用しやすくできる。すなわち、邦楽の愛好者のうち、一般に、歌謡曲愛好家はヨナ抜長音階とヨナ抜短音階に通じ、民謡愛好家や詩吟愛好家は民謡音階と陰音階に精通し、御詠歌はヨナ抜長音階と陰音階に、また尺八、箏、三味線等の純邦楽愛好家は陽音階と陰音階に通じているから、このような実情を考慮し、使用頻度の多い音階の宮音の上下の位置を一致させるとよい。例えば、第6図に示すものは、ヨナ抜長音階とヨナ抜短音階の宮音の位置を隣接して設けたもので、歌謡曲の演奏に便利である。第7図に示すものは、民謡音階と陰音階の宮音の位置を隣接して設けたもので、このようにすれば民謡や詩吟愛好家にとつて非常に便利である。第8図に示すものはヨナ抜長音階と陰音階の宮音の位置を上下に一致させたもので、御詠歌愛好家にとつて演奏し易い。第9図に示すものは、陽音階と陰音階の宮音の位置を上下に一致させたもので、尺八、箏、三味線などの純邦楽愛好家にとつて便利に使用することができる。

さらに、上記のように2つの音階の宮音の位置を並べる際に、それぞれの宮音の音の高さを演奏の目的に応じて選択すると、第3図、第4図で示した2系列の音階を、合理的な移調、転調の関係に構成することができる。例えば、上記第7図に示すような組み合せにおいて、宮音の位置を上下一致させると共にそれぞれの宮音の音の高さを同一にすると、第10図に示すような鍵盤の配列となる。なおこの場合同じ高さの上下の鍵盤を一つにしてもよい。図に示すものは民謡音階と陰音階の転調が自由に行えるだけでなく、通常の5音音階では演奏できなかつたような曲も演奏できるようになるので、演奏曲目の範囲も大巾に拡大する。すなわち、民謡音階は、ミーソーラーシーレーミとなり陰音はミーフアーラーシードーミとなるから、例えば、ミーフアーラーシードーレーミの音階を使えば「阿波踊り」、「よさこい節」、「戦友」等の曲を演奏でき、ミーフアーソーラーシーレーミの音階使えば、「黒田節(正調)」、「待ちぼうけ」、「ラツパ節」等の曲を演奏することができる。

また、元来外国音楽であつた7音音階の西洋音階も明治4年以来の学校音楽教育制度により、日本の音楽として広く定着している。例えば、そのような曲としては、長音階のものとして、「背くらべ」、「春が来た」「「春の小川」、「どじよつこふなつこ」、「あおげば尊し」、「きよしこの夜」、「われは海の子」、「どんぐりころころ」、「バラが咲いた」、「シヤボン玉」、「もろ人こぞりて」等の曲が知られ、短音階の曲としては「荒城の月」、「あの子はだあれ」、「月の砂漠」、「赤い靴」、「私の城下町」、「同期の桜」、「影を慕いて」、「おふくろさん」、「夢は夜ひらく」、「酒は涙か溜息か」等の曲がある。このような場合には、5音音階主体の鍵盤を持つ楽器においても7音音階が演奏できるように他の鍵盤を付加するようにすればよい。例えば、上記第8図に示した楽器に、シ、フア及びレ、ソ、シ♭の鍵盤を付加すればよい(第11図)。なお、この際それぞれの宮音の音の高さを同一にした場合は、第12図に示すような音程関係となる。

本発明は以上のように構成され、邦楽を演奏しやすい鍵盤楽器が提供される。

図面の簡単な説明

図面は本発明の実施例を示し、第1図及び第2図は7音音階の鍵盤と邦楽の5音音階の対応を示す説明図、第3図及び第4図は5音音階の鍵盤と邦楽の5音音階の対応を示す説明図、第5図は本発明の鍵盤を示す説明図、第6図~第9図はそれぞれ上下の鍵盤の宮音の位置を一致させた例を示す説明図、第10図は上下の鍵盤の宮音の音の高さを同一にした例を示す説明図、第11図、第12図は付加音の鍵盤を設けた例を示す説明図である。

第1図

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第2図

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第6図

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第3図

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第4図

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第5図

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第7図

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第8図

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第9図

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第10図

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第11図

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第12図

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特許公報

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